ジェロントロジーとは
ジェロントロジーは「老年学」「加齢学」と訳されています。加齢による人間の変化を、心理・教育・医学・経済・労働・ 栄養・工学など実に様々な分野から学際的に研究する学問です。今までは、主に、医療・福祉・美容という分野で生かされてきました。
「産業ジェロントロジー」とは、産業分野に特化したジェロントロジーの取り組みです。
当協会では、世代間の精神的・肉体的な違いに注目し、能力開発や労災防止、職場環境づくり、また、それらを推進する人材の育成に取り組んでいます。特にアドバイザー資格者の養成・資格認定は、多くの企業の方から賛同・支持をいただいています。
私たちの取り組みには、3つの特徴があります。
1つめは、産業という視点です。
従来のジェロントロジー研究は、医療や福祉におけるものが大半でした。例えば「介護予防」「ターミナルケア」「ボランティアと生きがい」などです。産業分野が欠けていました。また、実践力に乏しいという悩みもありました。そこで私達は、不足を補うべく、これに特化した研究・活動をすることにしました。具体例としては「職場内教育」「労災防止」「シニア世代に向く仕事・むかない仕事」などです。
2つ目は、全世代での取り組みです。
シニアのことをシニアだけで考えても、解決はできません。若年層、ミドル層、全ての世代が真剣に取り組むことが必要です。従来のジェロントロジーは「老年学」という訳語も手伝い、どうしてもシニア世代が中心となっていました。
設立以来、私達は全ての世代で取り組むことに注力しています。特に、企業において要となるミドル世代を重視しています。産業ジェロントロジーアドバイザー資格取得者の半数は40代が占めています。(2019年現在)
3つ目は、シニア世代のワークライフバランスと言う観点です。
これからは、介護や孫の世話、地域活動、リカレント教育など多様な活動をしながら働くシニアが増えてきます。そのためには、シニア世代のためのワークライフバランスという観点が必要です。ただし、20~30代の育児・子育て世代のそれとは別のものです。シニア世代ならではの施策が必要となります。
産業ジェロントロジー教育の必要性
私たちは、いくら努力しても自分の意志で年を取ることができません。よって「加齢とはどのようなことか?」について学ぶ必要があります。特に、働くうえでどのようなことが起きるのかということを考える「産業ジェロントロジー教育」は、高齢社会の必須科目として私たちはとらえています。
例えば、モチベーションの低下。気持ちの問題ととらえられがちですが、それだけが原因ではありません。高齢期になると疲労の回復が遅くなるため、やる気があっても行動が伴わなくなります。仕事の指示も急な出来事に対応することが苦手になるので、事前に準備できるように指示を出してあげることも必要です。このような特徴を若い世代が学ぶことにより、異世代間の歩み寄りが生まれます。また、中高年世代の方たちの自己管理や、気づきを促すことに役立ちます。
シニア世代になっても伸びる「結晶性能力」を生かす
高齢期になってものびる能力があることを、ご存知でしょうか。
「結晶性知能」と呼ばれるものです。
私たちの能力には、二つの種類があります。一つは「結晶性能力」という過去の知識・経験を生かす能力です。昨今の研究では、個人差があるものの一生のびる人もいるといわれています。二つ目が「流動性能力」という新しいことを覚える能力です。こちらは、加齢によって衰えてゆきます。
年をとると、新しいことを覚えなくなるからダメだなぁ…ではなく、今まで培ってきた知識や経験を生かして働く。苦手なことは素直に若年層にサポートしてもらう。人生100年時代の、働き方モデルです。
なお、このような働き方・仕組みづくりを実現するのが、産業ジェロントロジーアドバイザーです。